使徒パウロのローマの教会への手紙(13:8-10)
「互いに愛し合うことの他は、誰に対しても借りがあってはなりません」 (13:8)
ある若いお母さんがいました。彼女には10歳の息子さんがいて、ある晩その子を寝かせて何気なしにその子の寝顔を見つめていると、「もっと可愛がってあげたらよかった」という思いがこみ上げてきたそうです。本人が言うには、もちろん十分面倒を見て可愛がってきたつもりだけど、子どもの寝顔を見れば見るほど、「もっと可愛がってあげたらよかった」という思いがこみ上げてきたそうです。この母親は本物の母親だと思います。愛すれば愛するほど自分の至らなさを感じる。自分はこれでよかったのだろうか、もっとしなければならないことがあったのではないか、こう感じさせもっと人への思いを深めさせる、これが「愛の負債」です。
「互いに愛し合うことの他は、誰に対しても借りがあってはなりません」とパウロは言いました。「借り」とは負債、通常借金のことを言います。借金は普通返済したら後は何の義務も残りません。でも「愛の負債」は返しても、返しても無くならない。それどころか返せば返すほど膨らみ続けバブルのような負債ですが、返せば返すほど返す力に満たされる不思議な負債です。
「愛の負債」と言うと何か歌謡曲のタイトルのようですね。でも本当の意味を考えてみましょう。今日の黙想のヒントです。
(赤波江 豊 神父)