「わたしがあなたがたを愛したように、互いに愛し合いなさい」(ヨハネ15:12)
ヨハネは晩年をギリシャのパトモス島で過ごましたが、そのころ彼は90歳近くになっていて体が弱り、自分では歩くことができない状態でした。それで毎日曜日信徒たちは彼を車で教会まで運びヨハネはミサをささげていましたが、説教はいつも同じことしか話しませんでした。それは「子たちよ、神はあなたがたを愛しておられる。あなたがたも互いに愛し合いなさい」でした。それでも毎回大勢の信徒が彼のミサに参加していました。ある日一人の信徒が、なぜいつも同じことばかり話すのかと尋ねたところ、ヨハネは「わたしの先生がそう言っていたから」と答えたそうです。
この話はあくまでも言い伝えですが、わたしはこの話は真実ではないかと思います。ヨハネは弟子たちの中で一番若く、イエスに呼びかけられたときは恐らく14,5歳くらいの少年ではなかったかと思います。だからあまり意味が分からずついてくるこの少年ヨハネをイエスは可愛がり、分かりやすい言葉で何度も繰り返し「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい」と語りかけていたのでしょう。その言葉は少年ヨハネの心に深く刻まれ、福音書だけではなくヨハネの手紙の中でも、まるで体中を循環する血液のように彼の神髄となっています。
ところで、わたしも晩年のヨハネのように毎日曜日同じ説教で済んだら助かるのですが…ヨハネが羨ましいです。
(赤波江 豊 神父)