10月24日年間第30主日
赤波江神父の黙想のヒント

 「ダビデの子イエスよ、わたしを憐れんでください」(マルコ10:47)

 バルティマイという盲人は、イエスがエリコの町を出て行こうとするとき、そばにイエスがいると聞いて、「ダビデの子イエスよ、わたしを憐れんでください」と叫びます。おそらくこのチャンスを逃したら自分は一生癒してもらえないと感じたのでしょう。その叫び声を周囲の人々はよほど耳障りに感じたのか、彼を𠮟りつけますがなおも彼は叫び続け、ついにイエスの癒しを得ます。彼はイエスの癒しを得るために、長い祈りや断食や苦行をしたわけではありません。ただ「ダビデの子イエスよ、わたしを憐れんでください」と叫び続けただけです。初代教会の頃からイエスの名を呼ぶことで力が得られると考えられていて、次第に今日の盲人バルティマイの叫びが一つの信心となりました。

 カトリック教会には伝統的にアヴェマリアの単純な祈りを繰り返すロザリオの信心があるように、東方教会でも「イエスのみ名の祈り」という伝統的な信心があります。即ちイエスの名を繰り返す信心です。定まった祈り方はありませんが、代表的な祈りはバルティマイの叫びのような、「神の子主イエス・キリスト、罪人のわたしを憐れんでください」という祈りです。

 ロザリオの祈りは基本的にアヴェマリアの祈りを50回繰り返しますが、イエスのみ名の祈りは50回どころか、何百回も、何千回も、何万回も、つまり絶えず祈り続ける信心です。このイエスの名を呼び続けることにより、魂は清められ、罪は赦され、心は平安に満たされると信じられています。このイエスのみ名の祈りは東方教会だけではなく、今やカトリック、プロテスタントイギリス国教会など世界中のキリスト者に愛された祈りとなっています。

 典礼上1月3日は任意の記念日ですがイエスのみ名の記念日です。この記念日は聖ヨハネ・パウロ二世教皇によって制定されましたが、ポーランドという地理的に東方教会に近い国の出身の教皇自身も、きっとこのイエスのみ名の祈りを愛してこの記念日を制定されたのでしょう。なおこのイエスのみ名の祈りは「無名の順礼者」という本に物語として描かれています。一読してみてください。

      (赤波江 豊 神父)

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