2月27日 年間第8主日
赤波江神父の黙想のヒント

「人の口は、心からあふれ出ることを語るのである」(ルカ6:45)

 今日の第一朗読のシラ書も福音書と同じことを述べています。「心の思いは話を聞けば分かる…言葉こそ人を判断する試金石であるからだ」(シラ書27:6~7)思考は現実化すると言われています。心の思いは必ず言葉に現れます。人間の脳は2割の映像と8割の言葉によって作られると言われています。自分の運命は、誰でもなく、自分自身が発する言葉が決めるのです。言葉は人生の設計図です。もしいい人生を送りたいのなら、いい言葉を使いましょう。言葉は絵画、写真、音楽と同じように芸術でもあります。いい言葉は人を幸せにする力を持っています。そしてその言葉は、それを発した人に返るようになっています。ですから幸せになりたければ、日常的にいい言葉、きれいな言葉を使わなければならないのです。

 料理人は包丁を大切にします。料理の世界では「道具を大切にしない人は、道具から仕返しされる」と言われています。つまり、道具である包丁を大切にしないと怪我をするということです。私たちにとっても、コミュニケーションの大切な道具である言葉をぞんざいに扱うと自分自身を傷つけることになってしまいます。人の心は、自分が欲しいものや興味があるものに目が向くようになっています。つまりその人が見ているものは、その人が必要としているものです。否定的なことばかり言う人は、実は否定的な原因を自分で欲していつも探しまわっているのです。つまり、いつも否定的な「仲間」を集め続けて人を信頼しなくなり、結局自分も人から信頼されなくなるのです。否定的な考えや言葉は時空を超えて他者を傷つける力を持ちます。前向きな考えや言葉は行動と同じく社会に価値ある貢献をします。「仲間」を集めるのなら前向きな言葉、特に感謝という仲間を集めましょう。感謝の念は常に万物の創造主の足元にあり。太陽が地球の全てのものにエネルギーを与えているように、ポジティブで前向きな言葉は太陽のように人と社会にエネルギーを与えます。

 レーシングドライバーは車が壁に衝突しそうになったとき、決して目をつぶったり、壁を見たりするのではなく、危険から抜け出す方向を瞬時に見て、その方向にハンドルを切る訓練をしています。危険が生じそうになったとき、瞬時に回避方向を見ることでハンドルが瞬間的に危険から抜け出す方に向かい、衝突を避けることができるのです。同様に私たちも日常的にポジティブな言葉を使う訓練をすることで、何か状況が悪化したとき、いい言葉というハンドルを切って、その悪い現実を直ちにより良い方向に変えることができるのです。そして本人は気づかないことが多いのですが、そのような言葉は無意識のうちに太陽のように周囲の人にエネルギーを与えているのです。

 ある医師は、入院中に同室の人の世話をよくする人は病気が治りやすい、と語っていました。つまり自分が病気であるにもかかわらず、同室の病人の世話をよくする人は、きっと無意識のうちに、いい言葉、励ましの言葉を使い、その言葉がやがて自分に返ってきて、結果的に自分の免疫力を高めるのでしょう。私たちも体の調子が悪いとき、静かに横になっているのもいいですが、思い切って他に具合の悪い人を訪問して、その人の話に耳を傾ければ、かえって自分の調子がよくなることもあるのではないでしょうか。私もそのような経験が何度もあります。

 「本当に幸福になれる者は、人に奉仕する道を探し求め、ついにそれを見出した者である。これが私の確信である」(アルベルト・シュヴァイツァー)

      (赤波江 豊 神父)

今日の福音朗読

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