11月6日 年間第32主日
赤波江神父の黙想のヒント

「すべての人は神によって生きている」(ルカ20:38)

 今日は、普段とは違った角度から話します。今から138億年前、物凄い高温高圧の素粒子の塊が大爆発を起こして宇宙が作られました。これを「ビッグバン理論」と言います。地球の誕生は46億年前で、地球に生命が誕生したのは40億年前です。最初海に誕生した生命は、やがて陸へ進出しました。もともと地球に酸素はなかったのですが、植物が生まれ光合成によって酸素を作ることで、人を含めた動物が暮らせる環境が生まれました。やがて人は進化して、他の動物とは違った高度な理性と魂を持つようになり、人は死んでも魂の永遠、即ち「神が再び立ち上がらせてくださるという希望」(マカバイ記7:14)を願うようになりました。そのため、神を信じ、争いを避け平和に暮らすことを願うようになりましたが、パウロが言うように「全ての人に信仰があるわけではないのです。」(テサロニケ3:5)

 ロシアがウクライナに侵攻している状況は、第二次世界大戦と全く同じであり、人間は歴史から何も学んでいないことを示しています。私はこのような紛争が起こるたびに、実は人類社会は進化していないのではないかと思うのです。科学技術は進化しているように見えながら、心は進化しておらず、その進化していない心で技術を進歩させようと思うので、科学技術も間違った方向に陥ってしまいます。だからいつの時代でも、私たちは神を必要としているのです。「すべての人は神によって生きている」からこそ、正しいものは正しい、間違っているものは間違っていると判断し、神を知らずに道を外れて生きている人には、それを正して神に立ち返るよう促す使命があるのです。そして、第一朗読マカバイ記のように、苦しみの中でも神を信じて世を去る人に永遠の生命が約束されていることを伝え、そのような人の信仰が後に続く人々の魂を支え、進化させるのです。

 死があるからこそ、生命のエネルギー、即ち魂は不滅なのです。一人一人、顔も違えば性格や個性も違うように、与えられた寿命にもそれぞれ違いがあります。重要なのは単に長く生きるかどうかではなく、どれだけ満たされた人生であったかどうかです。16歳の少女を看取ったある医師は、その子が神や両親に感謝し、医師や看護師にも感謝の言葉を述べて、静かに命の灯を消した最後の様子を見て、自分に与えられた命を全うした素晴らしい死だと、深い感動を込めて語っていました。この少女の命は死によって表面的に消えたかに見えましたが、その生命のエネルギーである魂は新たな生命として生き続け、彼女に関わった人たちの魂を進化させたのです。

 どのように生きるかということは、思想や文学で答えを見出せても、どのように生涯を終えるかということは、やはり宗教の助けが必要になります。宗教は、にわか勉強では難しいのです。ですから、死ぬ前ではなく、若いうちから「人生と名付けられた、この束の間の歳月」についてしっかり考え、自分の死生観を託することのできる宗教を見つけなければならないのです。

      (赤波江 豊 神父)

今日の福音朗読

トップページ | 全ニュース