5月7日 復活節第5主日
黙想のヒント

「こうして、神の言葉はますます広まり、弟子の数はエルサレムで非常に増えていき、祭司も大勢この信仰に入った。」(使徒言行録6:7)

 今日の使徒言行録は、結びでは教会が発展していったことを伝えていますが、冒頭では教会の苦情の話で始まっています。教会はいつでもどこでも、人数が増えてくるとある問題が生じます。それはグループ間の対立です。初代教会でもユダヤ人の間には、ヘブライ語のグループとギリシア語のグループがあり、当初は弟子たちがやもめたちの世話をしていたのですが、やがて日々の分配のことでギリシア語グループからヘブライ語グループに対して、自分たちのやもめたちが軽んじられているという苦情が出ました。その原因は弟子たちが神の言葉を伝えながら、同時にやもめたちの世話をしていたことにありました。そこで話し合った結果、ステファノを始めとする7人にその世話を任せ、弟子たちは祈りとみ言葉の奉仕に専念することになり、こうして教会は発展することになりました。ですから、問題が生じたからこそ、その解決のため新しい奉仕職が生まれ、教会は成長したのです。

 この聖書の話は、特に現在の日本の教会に当てはまります。今日本の教会には多くの外国籍信徒がいますが、初代教会と同じように、外国籍信徒が増えれば言葉や習慣の違いで様々な問題が生じます。しかしお互いの違いを、乗り越えなければならない高いハードルととらえるのではなく、お互いの違いを喜び、それをハイブリッドとして教会という車のエンジンにする必要があります。お互いは単なる部分ではなく、お互いが触媒の役割を果たしてお互いに力を与え、お互いを一つに結ぶのです。それは妥協ではありません。妥協は1プラス1が1.5にしかならないことです。つまり最初は2を求めていたが、お互いが大事なものを諦めて1.5で手を打つことです。しかしお互いの違いを喜び、それをハイブリッドとするなら1プラス1が8にも16にも、更にはもっと増えるのです。

 このことは自然界においても、人生においても同じです。まず新しい生命を生み出す男女の結びつきである結婚がそうであり、また2種類の植物を隣り合わせに植えると、根が土中で入り組み、土壌を肥やし1種類だけ植えた場合よりも、よく育つと言われます。さらに人間の脳は直観的、創造的、視覚的な右脳と、論理的、言語的な左脳に分かれ、この二つを使うことで脳全体をフルに使いこなすことができるのです。人生は論理だけではなく、半分は感情によって成り立っているからです。人生は心と知性の交流によって成り立つ豊かな牧場でなければならないからです。

 このお互いの違いを喜び、それをハイブリッドにするためには、神の声を聴き分ける祈りが必要です。ルターは「今日はあまりにもすべきことが多いから、1時間ほど余分に祈らなければならない」と言いました。彼にとって祈りとは単なる義務ではなく、自らの内に力をたくわえ、それを解き放つ宣教のエネルギーであったのです。

      (寄稿 赤波江 豊 神父)

今日の福音朗読

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