8月20日年間第20主日
黙想のヒント

「あなたの願いどおりになるように」(マタイ15:28)

 イスラエル人ではないカナンの女性は、異邦人の自分でもイエスは必ず救ってくれるはずだと言う強い信仰をもって近づき、ついにイエスから癒しの恵みをいただきました。しかしイエスは自らが彼女を癒したとは言わず、「あなたの願いどおりになるように」と宣言しただけでした。今日イエスはこの言葉をカナンの女性だけではなく、私たち一人一人に向けられた言葉として受け取りましょう。

 イエスは福音書を通して何度も願いは聞き入れられるということを私たちに伝えてきました。しかし多くの場合この言葉は気休めに過ぎない、所詮願いなんて叶いはしないと挑戦もせず、最初から諦めている人が非常に多いのです。人間は神の前に非常に弱いという言い方がありますが、同時に人間は非常に強いのです。人間には心身ともに自然治癒能力が備わっていますが、同時に自己実現能力も備わっているのです。自分には必ずできるはずだという強い信念から生まれる人間としてのエネルギーは、障がいの有無とは関係なしに人間に本来与えられているのです。

 それでは誰でもがむしゃらに努力すればいいのかというと、そうではなく、そこには見落としてはならないいくつかのポイントがあります。夢をもって何かを目指している若い人のため、また大人でも何かを新たに始めようと思っている人のため、私は次のようなアドバイスをしたいと思います。

 まず大切なのは夢想力です。ああありたい、こうありたいと漠然と願っているだけではなく、今既に願いが実現している状態をいつも思い浮かべ、それを潜在意識にしっかりと焼き付けることです。それを今度はそれを紙に書くことです。夢は紙に書いて表現することで、夢の方から近づいてくると言われます。また紙に書くことで気落ちしたときの鼓舞となります。

 更に大事なのは感謝力です。自分を支えてくれる家族や周囲の人への感謝を忘れて、自分だけが頑張っていると思い込むと、いつの間にか変な方向へ行ってしまっていることがあります。最後に忘れてはならないものが裏の努力と言われるもので、一見今自分が目指しているものとは無関係に見えるものをどれだけ注意深く行うかということです。それは大きな声で挨拶する、必ずありがとうと言う、ゴミが目についたら拾う、履物を整える、部屋を整理整頓するなどです。実は、このような生活態度、礼儀正しさが心に余裕をもたらし、この心の余裕が大一番の力を強めるのです。例えば、トップアスリートたちはよく共通して、「勝負の神は細部に宿る」と言います。神は勝負の大一番ではなく、普段の生活を見ておられ、その生活態度が大勝負の一番に現れるのです。夢の実現にしても、信仰生活においても、目指すべきところへ行くには、普段の生活態度が基礎中の基礎となるのです。

      (寄稿 赤波江 豊 神父)

今日の福音朗読

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