「何事につけ、感謝を込めて祈りと願いをささげ、
求めているものを神に打ち明けなさい」(フィリピ4:6)
今日のパウロの言葉を注意して見ましょう。パウロは願いがかなってから感謝するのではなく、「感謝を込めて祈りと願いをささげ、求めているものを神に打ち明けなさい」と語り、願うとき既に感謝を込めて祈るよう求めているのです。
日本語には感謝を表現する言葉がたくさんあります。「ありがとう」以外に、仕事が終わったらお互い「お疲れさまでした」とねぎらい、食事は「いただきます」で始まり、「ごちそうさまでした」で終わります。何か協力してもらったら「助かりました」「お世話になりました」とお礼を言い、その他にも「ご苦労さまでした」「すみません」「恐縮です」など、日本語には外国語に見られない感謝を表現する言葉が多くあるのです。これは日本人の心とも言うべきもので、日本人の連携力はお互いを信頼するこのような言葉から生まれているのです。しかし、このような言葉は口に出してこそ、その力を発揮するのです。
ちなみに合気道によると、この世界には「気」という素晴らしいエネルギーが充満しており、そのエネルギーは人間の体の中も駆け巡っている。元気、根気、気が強い、気が弱い、気合を入れる、気を抜くなどの言葉に表されるように、人間が命を保つために最も重要な要素が気であり万物は全て気より生じている。そして日本語で感謝などの良い意味の言葉はすべて気を出すことを前提にしている。だから気は思うだけではだめで、それは「言葉に出す」ことが重要なのだ。従って、願いは頭の中で思うだけではなく、まさにパウロが「求めているものを神に打ち明けなさい」と言ったように、それを口に出すことが大切なのです。そして願いを実現する大きな力が感謝の言葉であり、それが感謝力なのです。
近年では祈りの科学的効果も研究され、ストレスによる免疫機能低下の改善を促したり、抑うつからの回復効果をもたらすなどの報告もなされています。ニュートンは「地球上において全ての物体は地球に引き寄せられているだけではなく、この宇宙においてはどこでも全ての物体は互いに引き寄せ合っている」という万有引力の法則を提唱しました。この法則を認めるのなら「全ての人は神に引き寄せられているだけではなく、全ての人は互いに祈りによって引き寄せ合っている」という祈りの法則も認めないわけにはいきません。
1912年にノーベル医学生理学賞を受賞したアレクシス・カレル博士は「祈りは人間が生みだしうる最も強力なエネルギーで、それは地球の引力と同じ現実的な力である。私は医師として多くに人があらゆる治療で失敗した後、祈りと言う厳粛な力によって病気から救われた例を目にしてきた。」と述べています。
祈りは神の引力です。この神の引力が「あらゆる人知を超える神の平和が、あなたがたの心と考えとをキリスト・イエスによって守るでしょう。」(フィリピ4:7)
(寄稿 赤波江 豊 神父)