2月25日四旬節第2主日
黙想のヒント

「これは私の愛する子」(マルコ9:7)

 イエスは受難を前にして、3人の弟子たちにご自分の光輝く姿を見せ、ご自分が真の救い主であることを示しました。この出来事を主のご変容と言います。そのときイエスは「これは私の愛する子」という声を聞きました。それは「神が私たちの味方である」(ローマ8:31)という意味でもあります。そのイエスは自分の宣教活動が理解されず、周囲から非難中傷を浴び、愛する弟子たちからも裏切られ、非業の死を遂げましたが、最後まで自分の信念を貫き通しました。

 「これは私の愛する子」この言葉は、もはや天の御父がイエスに語った言葉であるだけではなく、今度はイエスが私たち一人一人に語りかけておられる言葉でもあるのです。イエスから「これは私の愛する子」、なぜなら「神が私たちの味方である」との語りかけに対する私たちの応答は、イエスが愛してくれた自分を信じることです。自分を信じなければ、人も神も信じることはできません。神が私たちを愛し、味方であり、それほど私たちを大事にしてくれるのであれば、私たちも自分を大切にして、自分を信じて自分を貫くことです。

 際限なく押し寄せる情報の波に惑わされ、本来の自分らしさを失いがちな現代です。しかしアメリカの思想家エマーソンは、「絶えずあなたを何者かに変えようとする世界の中で、自分らしくあり続けること、それが最も素晴らしい偉業である」「真理は自分の内にあり、付和雷同せず、常に自己を拠り所として生きよ」と言いました。

 『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』など数多くの作品を生み出し、「漫画の神様」と言われた手塚治虫は「人を信じよ。しかしその100倍も自らを信じよ。時によっては、信じ切っていた人々に裏切られることもある。そんなとき、自分自身が強い楯であり、味方であることが、絶望を克服できる唯一の道なのだ」と言いました。

 鉄腕アトムは私の幼少期のヒーローであり、優しくも懐かしいあの主題歌「♪空を超えて ラララ星の彼方 行くぞアトム ジェットのかぎり 心優し ラララ科学の子 10万馬力だ 鉄腕アトム♪」は鮮明に永遠に私の心に残っています。しかし彼の人生は苦悩の連続でした。彼は親しい友人からも裏切られ、手塚の作品は時代遅れだと酷評されましたが、最後まで自分を信じ、自分を貫き通すことの大切さを「漫画の神様」は説きました。人間は弱い面もありますが、信仰や信念で行動するとき、非常に強くなるのです。

 強固な信念でイギリス経済を立て直し、「鉄の女」と言われたイギリス初の女性首相マーガレット・サッチャーは、「考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命となる」という言葉を残しています。全ては自分がどう考えているのかから始まり、考えを少し変えるだけで運命さえも変えていくのです。

      (寄稿 赤波江 豊 神父)

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