「学者たちはその星を見て喜びにあふれた」(マタイ2:10)
新しい年が始まりました。今年も希望と言う星の導きに従って歩んで行きましょう。希望は人生のジャンプ台です。私たちは昨年様々なことを経験し、また今年も多くのことを経験しますが、それがどんなものであれ、そこから何らかの形でプラスになるものを引き出すこと、これが前向きな心構えの第一歩です。前向きさは運を呼び込みます。強運な人は総じて平常心ですが、それはマイナス感情を抱かないのではなく、マイナス感情が生じても自分の心をこまめにケアしながら、それをプラスにする努力をしています。即ちどんな状況でもそこに幸せを感じられるということです。何でも感謝するからこそ、小さな危険信号にもすぐ気が付いて、これを通して神は私に何かを教えてくれている、早く気が付いてよかったと思えるのです。
運がいい人の特徴を聞いたことがあります。前向きでポジティブである、好奇心が強く変化を求める、何でも感謝する、そして人のために働くということです。これは一考に値します。もう一つ付け加えれば、忘れっぽいことも挙げられます。いいことも忘れるけど、悪いこともすぐ忘れる、いつまでも根に持たず頭の切り替えが早いということです。反対に私たちの人生の歩みを止めようとするサタンは、私たちが不安ばかり抱くよう仕向けます。不安を抱けば人は動かなくなります。人が動かなくなれば経済も停滞して、社会も動かなくなります。フランクリン・ルーズベルトは大統領に就任したとき大恐慌に見舞われました。彼は言いました「我々が恐れなければならないのはただ一つ、それは恐怖そのものだ」
悪い事件ばかりが報道され、世の中悪いように見えても、それでも社会が動いているということは、無数の善意な人たちが無償で働いているからであって、私たちはそのような人たちに依存しているのです。依存というと依存症とか依存心が強いとか、マイナスな意味で使われることがあります。依存の反対が自立です。自立はプラスな意味で使われますが、依存を排除するのではありません。社会で自立して生きると言っても、人間は誰かに依存せずに生きていくことはできません。自立とは依存を排除するのではなく、必要な依存を受け入れ自分がどれだけ多くの人に依存しているかを自覚して、それに感謝することです。依存を排除して自立のみを強調すれば、それは自立ではなく孤立になってしまいます。必要な依存が自立を助けるのです。人生の中には一見対立しているように見えて、実は共存しているものも多いのです。必死になって排除しようとしていたもののなかに、実は大きな価値があることが多いのです。
「学者たちはその星を見て喜びにあふれた」私たちも今年、希望と言う星の導きをしっかりとらえ、あらゆる出来事、出会いの中に幸福のヒントを見出しましょう。前向きさと感謝の心を忘れない人は周囲を明るく照らし、人の弱さに対しても寛容であり、それだけで立派な社会貢献をしているのです。
(寄稿 赤波江 豊 神父)