1月12日主の洗礼
黙想のヒント

「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」(ルカ3:22)

 この言葉は天の御父がイエスに向かって語りかけた言葉であるだけではなく、今度はイエスが私たち一人一人に向けて語られた言葉であり、さらに私たちが他の人に向けて語らなければならない言葉なのです。しかし「私はあなたを愛しています」など、言いにくいのが多くの日本人の本音でしょう。「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」(マタイ7:12)とイエスは教えました。つまり「人からこう思われたいのなら、そのように人を思いなさい」ということです。思いは言葉に先立ちます。

 日頃の私たちの思いが人生の設計図です。その思いが心という隠れたスタジオでリハーサルされるのです。私たちの中にひそむ怒りや憎しみの根を、自分が愛されていることに変容させるイメージトレーニングがあります。それは常に誰かの笑顔を心に浮かべ続けるというトレーニングです。子どもであれ、家族であれ、友人であれ、亡くなった人であれ、常に誰かの笑顔を心に持ち続けるのです。やがて私たちの顔は心に抱いているその笑顔と同じようになるでしょう。そして誰かこころよく思わない人の笑顔も思い浮かべてみましょう。その人が私たちに向かって「あなたは立派な人だ。優しくて真面目で本当に親切な人だ」と話しかけている声を、実際に聞こえるようにリアルに想像すると効果的です。このトレーニングは決して難しいものではありません。次第に心が満たされるでしょう。時間はかかりますが必ずできるようになります。しかし一生続けてください。

 このようにして誰を思い浮かべても、その人が満面の笑みを浮かべて、健康で豊かで満たされている様子を思い描くことができるようになれば、私たちは多くの人に喜びと幸せを与えることができるようになり、「あなたは私の愛する子、私の心に適う者」という言葉を体感できるでしょう。イソップ童話の『北風と太陽』のように、努力で人を愛するのではなく、人の笑顔を太陽として心に持ち続けることによって、自分の見方が変わり、それによって自分自身が満たされるのです。

 この宇宙には、同じ波長をもつもの同士は互いに引き付けあうという法則があります。これによって愛は愛を、希望は希望を、豊かさは豊かさを加速させます。同時にその反対のことも言えます。不平は不平を、怒りは怒りを、憎しみは憎しみを増殖させるのです。私たちの日頃の思いが想像力となってそれが現実化されるのです。

 いかに生きるかということは、いかなる心を持つかということと同じ意味です。心に描いたことが現実になります。キリスト教以外でも、例えば仏教ではこれを「思念が業をつくる」と表現しています。つまり心で思ったことが原因となって現実という結果を作るのです。ヒンズー教でも「人は自分が信じることによって作られる」つまり信じればその通りになると教えています。

      (寄稿 赤波江 豊 神父)

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