5月18日 復活節第5主日
黙想のヒント

「見よ、わたしは万物を新しくする」(ヨハネの黙示21:5)

 聖書の中には、よく「終わる」「過ぎ去る」「滅びる」という言葉がでてきます。何のために時代は過ぎ去り、ものごとは滅びるのでしょうか。それは新しいものが生まれるためにこそ、古い時代と古いものごとは過ぎ去っていかなければならないのです。ですから、聖書の視点は常に「新しさ」「誕生」「再生」なのです。「見よ、わたしは万物を新しくする」そうであれば、人間も常に新しさを求めて生き続けることが人間本来の生き方であり、その最終目的が「新しい掟」(ヨハネ13:34)という愛に他ならないのです。

 それでは、この新しさを実現するための大切なポイント、それはものごとを常に未来形で考え、語るということです。世の中には様々なメディアやSNSなどによりマイナスな情報があふれ、無意識の内に世の中は悪いことばかりだという錯覚に陥ってしまいがちです。そうなると、悲観しなくていいことに悲観し、恐れなくていいことに恐れてしまいます。ものごとを過去形で話すと、必ず不平不満、やがて罪と悪の責任を「人のせいにする」という症状が出てきます。もちろん過去の振り返りは必要です。しかし、「確かに過去はこうだった。しかし、これからはこのように考えて行こう。このように進めて行こう」というとらえ方が必要です。未来のことは誰にも分かりません。確かに不安はあります。しかし、未来が予測できないからこそ、そこには同時に「無限の可能性」があるのです。この「無限の可能性」を引き出していくためにこそ、ものごとを未来形で考え、語ることが必要なのです。それにはポジティブ思考とポジティブ言葉が欠かせません。これによって更に「信仰の門を開いて」(使徒言行録14:27)いくことが可能となります。

 人間の体には「自律神経」と呼ばれる神経が全身に張り巡らされています。自律神経は体温調節、血液循環、消化吸収など、人間の無意識な生命活動を担っています。この自律神経は心の状態に左右されやすく、心が前向きだと正常に働き、心が後ろ向きだと不具合が生じます。ですから、心を常に前向きに整えておくことが何よりも必要なのです。

 漫画『鬼滅の刃』が人気なのは、その言葉の積極性にあります。「頑張れ!人は心が原動力だから心はどこまでも強くなれる!」(竈門炭次郎)「人のためにすることは巡り巡って自分のためになる。そして人は、自分ではない誰かのために、信じられないような力を出せる生き物なのだよ」(竈門炭次郎)「どんな時もアンタからは不満の音がしていた。心の中の幸せを入れる箱に穴が開いているのだ。どんどん幸せがこぼれていく」(我妻善逸)「この世は、ありとあらゆるものが美しい。この世に生れ落ちることができただけで幸福だと思う」(継国縁壱)「炭次郎の心の中は暖かかった。空気は澄みきって心地よく、さらに光る小人が存在している。これは炭次郎の優しさの化身である」(ナレーション)この炭次郎たちの言葉の中に、日頃の私たちの心の奥底にある憧れが潜んでいるように思えます。          

      (寄稿 赤波江 豊 神父)

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