6月15日 三位一体の主日
黙想のヒント

「希望はわたしたちを欺くことがありません」(ローマ書5:5)

 梅雨に入りこれから暑くなって夏に向かいます。ところで、私の好きな夏を代表する歌が二つあります。それはラジオ体操の「新しい朝が来た 希望の朝が…」と、夏の甲子園の主題歌「雲は湧き 光あふれて…」です。子どもの頃から毎年聞いているこの歌は、何歳になっても聞くたびに全身に力がみなぎるのを感じます。特に、「新しい朝、希望の朝」を迎えることは、私にとって毎日新しい人生を迎えることだからです。

 過ぎた一日は決して帰ってきませんが、明日という日は永遠に私たちを訪れてくれます。明日が訪れるということは、今日どれだけ失敗しても、また新しいチャンスが与えられるということです。しかしそのチャンスを得るためには、いつも準備しておかなければならないことがあります。それは常に学び続けるということです。

 「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」(マハトマ・ガンディー)ファッション界に革命をもたらしたココ・シャネルは「私にように、教育を受けていない、孤児院で育った無学な女でも、まだ一日に一つくらい花の名前を覚えることはできる」と語り、一生学び続けた人でした。実際孤児院で生まれ育ち、十分な教育も受けられなかった彼女は自力で道を切り開き、87歳で亡くなるまでファッション界の第一線で活躍しました。若い才能が次々と活躍するファッション界でその地位を維持し続けたのは、学ぶ姿勢を保ち続けたからでした。彼女は聖書のとおり「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」(5:3~4)ことを経験しましたが、その希望の源泉は学ぶ姿勢でした。

 彼女はまた「美しさは、あなたがあなたらしくいると決めたときに始まる」と言い、いかに美しく見せるかではなく、品性、言葉遣いや態度など内面を強調しました。女優オードリー・ヘプバーンも「美しい唇であるためには、美しい言葉を使いなさい。美しい瞳であるためには、他人の美点を探しなさい」と言って真の美しさは内面から、即ち「神の愛が私たちの心に注がれている」(5:5)ことの表れであることを強調しています。

 「老いての後学」という日本のことわざがあります。あまり好奇心が強く、細かいことをいちいち詮索する老人は敬遠されることもありますが、反対に知的好奇心を失えば精神的な若さも保つのが難しくなります。知的好奇心を持ち続け、いつも生活意欲を失わず、周囲の出来事に積極的に対処して、今日も生きるのが楽しいという心構えを保ち続ける以上精神的な老化はやってきません。「年を重ねるだけでは人は老いない。理想を失うことによって人は老いるのだ」「人は信念と共に若く、疑惑と共に老いる。」(サミュエル・ウルマン)反対に老人を敬遠するような若者は、すでに精神が老いている面があります。

 人生とは自転車に乗るようなものです。倒れないためには常に走り続けていなければなりません。その走り続けることとは、「希望はわたしたちを欺かない」ことを信じて。学び続けることです。

      (寄稿 赤波江 豊 神父)

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