「水を飲ませてください」(ヨハネ4:7)
「イエスは旅に疲れて、そのまま井戸のそばに座っておられた」(4:6)旅に疲れたイエスの様子が目に浮かびます。そのイエスが、サマリアの女性に「水を飲ませてください」と頼みます。私たちも、しばしば人生の旅に疲れて座り込み、水を飲ませてくださいと、誰かに頼みたくなります。その「水」とは何でしょうか。そのヒントは第2朗読の「希望は私たちを欺くことがありません」(ローマ5:5)というパウロの言葉にあります。
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が始まりました。今の日本人に最も希望を与えてくれるのは、やはり大谷翔平ですね。その投打二刀流の元祖と言えば、ベーブ・ルースです。ベーブ・ルースが現役の頃、彼の大ファンだったジョニーという大きな病気をもつ男の子が、彼に会いたいという手紙を出したところ、何と彼が本当に入院中のジョニーに会いに来てくれました。よもや、本当にスーパースターが会いに来てくれるとは夢にも思わず、感激するジョニーにベーブ・ルースは「俺はワールドシリーズでホームランを打つ。だから君も病気を治すのだよ」と励まします。その後ジョニーはラジオで、彼が本当にワールドシリーズでホームランを打ったというニュースに感動し、彼との約束通りジョニーは奮起して病気を治し、その後も長寿を保ったのでした。病気で心が渇いていたジョニーが求めていた本当の水は「希望」だったのでした。
キリスト教思想家の内村鑑三は「富も財産なり。知識も財産なり。健康も財産なり。才能も財産なり。意志もまた財産たるなり」と述べています。富も知識も健康も才能も大切です。しかし自分はこうしたいという強い意志、つまり希望こそが一番の財産なのです。
最近アメリカとイスラエルがイランを攻撃し、世界は混迷の度を増しています。このような状況の中で、未来に不安を感じている人も多いでしょう。しかし、「これから先どうなるか分からない」という言葉には、もう一つ大切な意味が含まれています。それは、これから先どうなるか分からないからこそ、そこには無限の可能性とチャンスが隠されているのです。未来を不安の目で見るのではなく、可能性とチャンスの目で見ましょう。希望とは、新たな勇気のことであり、この希望と言う自分の目的地を知っている人に、運命は必ず道を開いてくれるのです。
『あなたが今見ているものは、あなたが欲しているものです』あのタイプの車が欲しいと思えば、路上を走る無数の車の中から、すぐその車を見つけます。素敵な人と結婚したいと願う若い人は、人混みの中でもすぐ理想の人を見つけます。世の中悪いことだらけだとつぶやく人は、あえて悪いことを探しているのであり、不平不満を心のどこかで楽しんでいるのです。そうではなく、世の中案外良いことも多いと言う人は、無意識の内に良いことを探し、人の幸せに貢献しているのです。出来事そのものに良し悪しはありません。出来事はすべて中立です。その受け取り方が問題なのです。
(寄稿 赤波江 豊 神父)